妻夫木聡×綾野剛 | fDtD    

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妻夫木聡×綾野剛

今日映画館で『怒り』を見てきました。
普段見るのはアニメ映画や洋画ばっかりで、邦画にも日本の俳優さんにもあまり縁がないのですが、次のような経緯があったので…。

①夏に見に行ったポケモン映画の途中(最後の感動シーン)で突如音声のみが消えるという不具合が発生し、もちろん巻き戻し再生をしてもらった上で、さらに映画館からお詫びの無料招待券をもらう。
その有効期限は11月末までと意外と短いので、何の映画に使うべきか迷っていた。
②そんなある日、妻夫木聡と綾野剛がガチのゲイカップルを演じていて、濃厚なベッドシーンもあるPG12指定の映画があるという情報を耳にした腐女子の私。
③『怒り』というタイトルからあらすじを調べる。
東京・千葉・沖縄の三箇所で暮らす人々の元にそれぞれ身元不明の男が一人やってくるが、その三人の中に整形した殺人犯がいる!
…という内容で、犯人当て的な要素がミステリー好きの心をくすぐり、ゲイシーンよりむしろ犯人知りたい欲が高まる。

映画を観る前に私が仕入れたネタバレなしの情報がこれです。
9月中旬に公開されて、まだそこそこの映画館でやってますので、興味を持たれた方はぜひ!
ただし、ゲイカップル+犯人当てという気軽な気持ちで入った私は、あまりの内容の重さに潰されました。
吸収しきれなかったものがしばらくはお腹の中でタプタプしてる感じというか、深いため息を吐いても吐いても肺の中が一杯な感じというか…。
いい映画なのは確かなので、何でもドンと来い!な人は迷いなく見に行ってほしいです。
以下ネタバレ含んだ感想です。

目当てが目当てだったので、優馬(妻夫木/攻め)と直人(綾野/受け)の東京編についてやっぱり一番色々と思うところが。
腐女子的に萌える!って思ったところもあれば、最後の方のすれ違い悲恋っぷりに泣ける!って思ったところもあって、萌えと悲しみのミックス状態。

●まず妻夫木聡のナチュラルなゲイ演技がすごい
なんとなく、「リアルなゲイっぽい空気あるな」って思えるんだよね。
日本のメディアってステレオタイプなオカマ表現に逃げがちじゃないですか。
オネエ演技のお笑いに逃げるというか。
でもこの映画の東京編では、普通に生活しているゲイの描写がされていて、それがこの映画の評価を上げる重要なポイントかなあと思います(腐目線抜きにしても)。
ナチュラルなゲイと言っても、「家賃高そうなお洒落マンションに住んでるエリートリーマン」なんていうキャラ付けは、BLで好まれる攻めの属性だな〜なんて思ったり。
最初にハッテンバで直人を無理矢理xxするシーンの、あの優馬のコンドームの開け方がね……手慣れた攻め様感あって腐女子心に突き刺さるよね。

●次に綾野剛の儚げで猫っぽい受け演技がすごい
あの服の襟ぐりから見えるうなじとか鎖骨とか白くて綺麗なお肌とか、受けちゃん!ってオーラが溢れてましたね。
受けの綾野剛の方が実は妻夫木より背が高いって後から知って、全然そんな風に感じなかったよ!って驚きました。
しかも最後の方では重い病気持ち設定が明かされ、私より一つ二つ上の世代の儚いJUNEの受けっぽさが増した(個人的イメージです)。
『すべてがFになる』ドラマ版で「この人は犀川先生のイメージじゃない!」って怒りを爆発させた私ですが、綾野剛さんの評価を変えることにします。
『怒り』を見て怒りが消えた……?

●そしてそんなキャラ設定二人から織り成されるBLすれ違い展開がすごい
直人が女とカフェで話してるところを見つける優馬、浮気疑惑やその他疑惑を思わず直人にぶつけてしまう…という時点で「当て馬女きた!」ってテンションアップ。
その後の直人失踪→直人に殺人犯疑惑をかけて警察からの連絡を無視する優馬→実は直人は心臓の病気を患っていて公園でお亡くなりに……の展開が、クズ攻めx健気受けの悲恋BLすぎて腐女子は泣いた。
警察の電話にしらばっくれたシーンでの腐女子の心の叫び:
「その警察の電話、絶対疑ってるようなものじゃないって!ミスリードだよ!直人はきっと何か大変なことになってるんだって!オラ、はよ正直に言え!あ〜〜捨てるな〜〜後悔するクズ攻めになってしまう〜〜!……あ、これバッドエンドルート入ったよ!もう知らんよ!」
あそこでちゃんと警察に答えてたら、まだ死後すぐの直人に会えたかもしれないのに。
悲しいけど、攻めってこういう定めなのね……。

お墓に関する話をしてた時、自分の病気を踏まえて直人は何を思っていたのかなあと考えると余計泣けますね。
優馬は最後に直人を疑ってしまった自分自身に「怒り」を感じたのかもしれないけど、直人は人生の最後に優馬と暮らせて幸せを感じていたのなら、少しは東京編にも救いがあるかなあ。
あれだけお墓について話をしていたから、最後は優馬があのお墓に行くシーンがあるんだろうな、と思ってたら、最後は沖縄編と千葉編が交互に映るばかりで、東京編に一切尺が回ってこなかったのが心残りです。
あれだけ前振りあったなら、フツー最後お墓出すっしょ!?なんで!?
というのが素人腐女子の「怒り」。

一回目の視聴ではやっぱり私も少し直人を疑ったこともあったので、真相を全部知った上でもう一度見たら新しい発見があるんだと思います。
最初の「信じてくれてありがとう」とか、浮気疑惑カフェシーンで直人が話していた内容が実は優馬との惚気話だったとか……二回目見てももっと辛い気持ちになる予感しかしない。

東京編以外も含めた全体としては、
信じきれずに疑ってしまった千葉編=そこそこハッピーエンド
同じく信じきれずに疑ってしまった東京編=悲恋死別エンド
がっちり信じきっていた沖縄編=殺人犯大当たり悲惨エンド
っていう構造が皮肉だし、それが「怒り」に繋がる展開は「なるほどなー」と思いました。
最後まで信じきれた人が救われて、疑ってしまった人は相応の報いを受ける、っていうのがハッピーエンドに至るパターンじゃない?
でもそれが逆だったからこそ、無実の人を疑ってしまった人は自分に「怒り」を、逆に信じていたのに裏切られた人は相手に「怒り」を…という全員何かしらの「怒り」を抱えるモヤモヤエンドになった、と。

いやー、でも沖縄編のたつや君はかわいそうだったよ。
あそこも途中から女の子がフェードアウトして、少年と兄貴分の絆っていう腐女子向け展開になってたのにね。
味方だと信じてた兄ちゃんがトチ狂って殺人鬼の本性表してからは、もう萌える余裕が消えましたわい。
沖縄編がえぐいから、東京編のために二度目見ようという気持ちに躊躇いが生じますね。
それに比べて千葉編だけ希望ある終わり方でずるい。……ずるくない?

とにかく重い映画でした。
優馬×直人に関する悲しみは、ブロークバックマウンテンを見た時の悲しみの重さを想起させます。
原作小説にはもう少しいろいろなエピソードがあるようなので、そちらを読もうかなと考え中。
小説読むより先に、自分の書きかけ小説の続きを書けって話もありますが…!