仲良し男子大学生二人を一晩ラブホにお泊まりさせたらどうなるか 前編 | fDtD    
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仲良し男子大学生二人を一晩ラブホにお泊まりさせたらどうなるか

前編

 土曜深夜二時半、都内某所。終電を逃した五十嵐浩司は、友人の柊薫と共に駅前へ続く道を歩いていた。
「なー、コージ、こっからどこ行くんだ?」
「どこって言ったって――
 二人の会話を遮るように、名刺を持った男が薫に近付く。
「お兄さん、ちょっと時間いい?」
 こんな時間だが、おそらく何かのスカウトだ。浩司は横目で薫を盗み見た。くりっとした大きな瞳に、スッと通った鼻筋。束感のある茶色の髪の先には、華奢で白いうなじがチラリと見える。薫の身長は平均以下なので、モデル向きではない。にも関わらず、こうして何かしらのスカウトを受けているのはよく見る光景だった。
 薫は慣れた様子で差し出された名刺をやんわり断る。スカウトマンが次に浩司を一瞥したが、薫がスタスタと歩き出してしまったので、目だけで会釈して彼を追った。
「あー、寒っ」
 ぶるっと身を震わせて、薫がぼやいた。
「十一月なんだから、夜はそりゃ冷えるだろ。ちゃんと上着持って来ないと」
「少し前までたくさん蝉がいた気がするんだよな」
「少し前っていつだよ。蝉はもう一ヶ月以上前にお亡くなりになってるだろ」
「うー……」
 薫が不満気に唸る。浩司は黙って自分のジャケットを脱ぐと、それを薫の肩にかけてやった。幸い浩司の方が身体は大きいので、薫はそれを難なく身に付けられる。
「さっきまであれだけ飲んだのに、また喉乾いた……」
 そう言った薫の口から、盛大な溜息が落ちる。浩司はすかさずバッグからペットボトルのお茶を出した。
「これ、さっき飲み屋の出口にあった自販機で買った。『あったか〜い』が『なまぬる〜い』になってるけど、飲む?」
「飲む!」
 即答した薫は嬉しそうに浩司へと両手を伸ばす。背の低いペットボトルを握らせてやると、彼は手の平でその温もりを確かめた。浩司が一口だけ飲んだそれを、薫はコクコクと美味しそうに飲む。
 そうこうしている内に、やがて小さな公園が見えてきた。そこでベンチに薫を座らせると、彼は携帯を取り出して画面に視線を落とした。
「で、こっからどうすんの?」
「えーっと……」
 浩司はキョロキョロと周りを見てから頭を掻く。
「コージがとりあえず駅前の方に行こうって言ったんだろ。どっか当てがあんのかと思った」
「じゃあ、漫喫とか、カプセルホテルとか?」
「えー、コージが奢れよー。お前が店出る時間間違えたんだしさ。それに俺、今バイク買うために貯金してんだって」
「バイクって、今の彼女……ユリだっけ? あいつに何か言われたんだろ?」
「サユリだよ」
「名前なんてどうでもいいよ。どうせすぐ別れるんだし」
 浩司のその言葉に、薫はムッと携帯から顔を上げた。
「ひっどいなー。俺がモテるからって、童貞のやっかみかー?」
「そ、そんなんじゃない。この前だって……ミユキだっけ?」
「ユキ」
「そう、そいつに指輪買うからって俺の金三万も貸したのに、二週間ももたないんじゃな。そんな男女交際はちっとも羨ましくない」
「えー? でもこの前の飲み会の時コージ言ってたじゃん。『成人したんだから童貞も卒業したいな』って。あれでせっかくミカがお前に擦り寄ってたのに、何で断るかなー?」
「擦り寄ってた?」
 浩司が首を傾げると、薫は「だーっ」と自分の髪をクシャクシャ掻きむしった。
「お前に言い寄ってたの丸分かりだっただろ! コージは鈍すぎんだって」
「うん、ごめん。微妙に仄めかされるくらいじゃ分かんないんだよね、俺」
 浩司は自分が鈍いことを自覚している。タレ目気味の甘い顔で曖昧に笑って誤魔化しているが、相手の感情や空気を正確に読めていないのが事実だ。相手の顔も名前も感情も、何も興味が持てないと言った方が正しいかもしれない。
「まあ、どっちにせよ……ミサ? ミカ? って好みじゃなかったし」
「選り好みしてると童貞のまま三十になるぞー。コージも顔は悪くないんだから、好みとか気にせず遊んでけ。まず表情をもっと元気な笑顔に! その染めてんだか染めてないんだか分からない髪も、もうちょい明るい色に変えてもらったら?」
「うるさいな。薫こそそうやって取っ替え引っ替えしてると、いつまでも未婚だからな」
「しょうがないだろ? なんか、誰とも居心地良くないっていうか、いや、男の俺の方が女の子を居心地良くさせなきゃいけないんだろうけど、それがめんどいっつーか」
 薫はそこで、はーっと特大の溜息をついた。
「サークルでお前と付き合った女の子、皆何て言ってるか知ってるか? 優しくない、構ってくれない、むしろこっちが気遣ってあげないとならない、めんどくさい、浩司が甘やかしすぎるからいけない」
「あーっ、うるさい! 女だからってお姫様扱いしてもらえると思うなよ! むしろこんな名前なんだから、俺をお姫様にしろ!」
 俺ならお前のことお姫様扱いしてやれるのに。
 俺がどんなに鈍くても、薫のしてほしいことだけなら分かるのに。
 心の中で浩司は呟く。この恋心に気付いてから約六年、ずっと言えずにいる言葉を。
 彼に惹かれ始めたのは、中学で出会ってすぐだった。少し我儘だけれど、裏表がなくて分かりやすい。彼とだけは話しやすいことに気が付いて、それは一年もしない内に執着心に変わった。それを恋と言い換えるのに、浩司は不思議と抵抗がなかった。
 ノンケの薫に告白したところで、振られるのは分かりきっている。それでも、何とかして彼を引き止めたい。そこで浩司が選んだのは、ひたすら薫を甘やかして世話を焼いてやることだった。そうすることで、薫が自分なしでは生きていけなくなってしまえばいいと思っていた。
 彼が女と別れるたびにこっそり喜び、しかし彼と自分の関係は何も変わらないことを憂い、その繰り返しで今この場所、この時に至る。
 その時、カメラを構えた一人の男が二人へと近付いてきた。鍛えられた筋肉もさっぱりした髪型も、爽やかなスポーツマン風だ。
「そこの君たち、今夜この後何か用事あるの?」
「ありませーん。こいつのせいで終電逃しましたー」
 ベンチから立ち上がった薫は、浩司のことをじとっと見上げた。
「おじさん、そのカメラ回ってんの? なんかテレビの撮影?」
 男の構えたカメラに向かって、薫はピースサインをしてみせる。
「まあそんなところ。ねえ、今夜泊まれるホテルの部屋が一室余ってるんだけど、良かったら使わない?」
 カメラから少し顔を離した男は、二人に向かってにっこりと笑いかけた。


***

「ホテルって、ここラブホじゃん!」
 薫の声がホテルロビーの壁に反響する。
「まあ、ベッドで寝る分には普通のホテルと変わんないでしょ」
 男はそう言って、カメラで浩司と薫の表情を順に捉えてから、ホテルの内部へと歩き出した。
 通された部屋は、南国リゾート風の小綺麗な一室だ。浩司がラブホテルと聞いて思い浮かべるケバケバしいイメージとは随分違う。
「はい、二人ともそこ座って」
 指定された通り、ベッドの端に並んで座ると、カメラを持った男が二人の正面にある椅子に腰を下ろした。
「二人とも、名前は何て言うの?」
「俺は薫。こいつはコージ」
「何歳?」
「俺もこいつも二十歳。ピチピチの大学二年生」
 薫が勝手に会話を進めていくのを、浩司は黙って聞いていた。
「二人は友達なんだ?」
「そう、中学と高校が一緒で、今は同じ大学の同じサークル」
「へえ、付き合い長いんだね。二人ともかっこいいけど彼女とかいる?」
「俺はいるけど、コージは駄目。誘われても断るからいつまでも童貞」
「じゃあ二人とも……彼氏は?」
 ここからが本題と言わんばかりに、男の声の調子が少し硬くなった。
「は? 彼氏ってどういう意味?」
「だから、男の恋人はいるのかなって。その反応だとノンケみたいだね」
「あ、あああ当ったり前だろ? な、コージ?」
 狼狽える薫に、浩司は何も言わなかった。
「じゃあ、二人とも一晩こんなところで過ごしても、何も起こらないよね?」
「も、もちろん! 修学旅行みたいなもんだ」
 そこで、男はカメラを動かさないようにボストンバッグを片手で漁り、一枚のパネルを取り出した。
「えー、これね、テレビとかでよく見るでしょ」
 男は二人に見せるようにパネルを立てる。ほとんどは薄い紙で覆われているが、一番上のタイトルだけは隠れていない。
『一攫千金ミッション! 朝までに……』
 そこから先はまだ読めない。
「気になる?」
「一攫千金ってそりゃ気になるでしょ。バイク買えんのかな」
 薫が呑気にそう言うと、男はペリッと覆いを剥がした。
『オナニー……一万円
 扱き合い……二万円
 フェラ……三万円』
「な、何だこれ」
 薫が唇を戦慄かせる。
「朝までにこれができたら、賞金が貰えるミッションだよ」
「そこ、まだ何か残ってる」
 薫が指差したのはパネルの一番下の部分だ。彼の言う通り、一行分まだ隠れたままになっている。
「え? 見たいの? 男子大学生は貪欲だなあ」
 男がわざとらしく「えいっ」と声を出して紙をめくる。
『中出し一発ごとに十万円追加!』
「な、何言ってんだよ! そんなの男同士でできるわけないじゃん!」
 薫がブンブン首を振るのを、男はニヤニヤと見ていた。
「うん、できないと思うなら別にやらなくていいよ。何もしなくてもペナルティーはないから、朝まで普通に寝てればそれでおしまい。タダで泊まれてラッキーなだけ」
「ふ、普通に寝るに決まってんだろ! なあ、コージもこんなの無理だよな?」
 浩司が何か言おうとした時、カメラを持った男が立ち上がる。
「まあ、無理かどうかは二人っきりでよく相談してよ。結果に関しては、この部屋に仕掛けてあるカメラで確認してるから」
 彼はそう言ってカメラを持ったまま後ろ足で部屋の出口へと向かう。去り際に、男はちらりと浩司を見た。「うまくやれよ」と言わんばかりに。
「何なんだよ、これ! 一攫千金なんて期待させるようなこと言って、無茶振りじゃねーか!」
 彼は手の届かない葡萄を視界から追い出すように、パネルを伏せてサイドテーブルに置いた。
「風呂入って寝る!」
 彼はそう言ってベッドにゴロリと寝転がった。これを訳すと、シャワーは嫌だ、風呂の準備をして来い――という意味だ。女とホテルに来た時もこんな調子なら、すぐに別れるのも納得というものだ。
 浩司が一旦風呂の用意をして戻ってきた時、薫はベッドに座って携帯の画面を見ていた。
「このこと、話のネタになるとでも思って誰かに教えてる?」
「まさか! こんなのネタにもなんねーよ」
 お金が貰えるかもしれないと期待させるだけさせて落とされ、彼は随分ご立腹のようだ。そしてその憂さ晴らしのターゲットに浩司が選ばれた。
「そういえばコージ、初めてのラブホの感想は? まさか回るベッドがあると思ってた?」
「そ、そんなわけないだろ」
「見栄張らなくてもいいのに。ほら、先輩が色々教えてやるよ。ここで部屋の照明とか変えられて――
「いいよ、別に」
 浩司が慌ててテレビを付けると、画面一杯に肌色が映る。いわゆるAV、しかもご丁寧に男同士だ。
『あっ、あっ、ぁあっ、あっ……』
『あぁ、イク、イク、出すよ……っ、中に出すよ……!』
 画面の中の男が、壊れるほど強く腰をガンガンと叩きつけ、パンパンパンパンと肌のぶつかる激しい音が部屋に響く。ピタッと男のピストンが止まったその時、受け入れている男が『あぁー、ぁーん』と掠れた喘ぎ声を漏らした。
 ブチッとリモコンでテレビを消すと、部屋の中はシーンと静まり返る。
「な、なんだ、これ。ホテルのテレビって男同士のこんなんもあるのかよ」
「『先輩』でもラブホについて知らないことあったんだな」
「いやいや、これ絶対さっきのカメラの男がやってったんだって。俺たちをその気にさせる仕込みだよ」
 立ち上がった薫はその場で地団駄を踏むと、ドスドスと肩を怒らせてバスルームへと消えた。


***

 順番に風呂を使った後、電気を消した部屋の中で、二人はダブルベッドに並んで仰向けになっていた。「このまま朝まで寝よう」と言ってからまだ十分も経っていない。
「そういえば、さ……」
 浩司が話しかけると、案の定まだ起きていた薫がモゾモゾと浩司に身を向けた。
「中学の頃、何回かしたよな。擦り合いっこ。まだオナニー覚えたての頃で、お前ん家の親がいないって日に」
「わ、忘れろよ……」
 浩司は操作パネルに手を伸ばして部屋の電気をつける。薫の顔は少し赤くなっていた。
「あと、中三だったか高一だったか忘れたけどさ、二人でオナってどっちが遠くまで精子飛ばせるかとか」
「やーめーろー」
 聞きたくないとばかりに、薫が頭まで布団を被ろうとする。しかし浩司は彼の手を無言で制止した。
「オナニーで一万、扱き合いで二万だっけ? 昔やったことあるんだから、そこまでなら……」
「コージ! お前正気か!?」
「だって、三万円……お前から借金返してもらえてないし」
 その言葉に、薫はグッと喉を詰まらせた。
「なあ、時給換算したらすげー割りのいいバイトだろ? オナニーなんてすぐ終わるし、どうせいつもやってることだし」
「そりゃ、そうだけど……」
「だけど? 今度バイク買うんだろ? 俺への借金いつ返せる?」
 弱点だけを集中的に攻める。薫がモジモジと枕に顔を埋めた瞬間、彼の防御が弱まったのを見逃さない。浩司は素早く彼の股間に手を伸ばした。
「……わ、おい、ちょっと」
 柔らかなバスローブ越しに、彼の膨らみを揉みしだく。
「あれ? ノーパン?」
 バスローブの合わせ目から中に手を入れると、まだ萎えている彼のそこに直接指先が触れた。
「っ、コージ、本気……?」
「借金」
「うぅ〜……」
 抵抗がなくなったのをいいことに、浩司はムクリと起き上がって薫のバスローブの前を広げた。
 真っ白いバスローブの上に、日に焼けていない白い裸体。彼の裸を見たのは三年ぶりくらいだろうか。しどけなく横たわる身体は、女を知ってやけに艶かしくなったような気がした。
「まずは、オナニー。これで一万円な」
 薫の手を取り、彼自身の性器を握らせる。彼は観念したように息を吐くと、不満そうに皮被りのそこをグニグニと刺激し始めた。
「あのさ、俺がオナればいいんだから、別に浩司はそんなじっくり見てなくていいだろ」
「え? あ、うん……」
 大好きな薫の裸どころか自慰シーン。浩司がじっくり見るのも無理はない。何とか不審に思われないように部屋を見回すと、すぐ脇のサイドテーブル上に怪しいおもちゃの山を見つけた。
「薫、こんなのあるけど……」
 浩司が手に取ったのはオナホール、通称オナホだった。
「そんなの使わなくてもいいって」
 シコシコと上下する彼の手の中、彼の息子は皮から頭をぴょっこりと出して、既に上向いていた。
「そうじゃなくて、俺がこれ持ってるから、ちょっといつも女の子とヤる時みたいにヤって見せてよ」
「はあ? このオナホをマンコに見立てろってか?」
「そう。童貞の俺に『先輩』のテクを教えてもらおうかと思って」
 煽ててやると、薫は得意気に「童貞君はしょうがないなあ」と言った。
 というわけで、特等席で彼のオナニーを見る権利を手に入れた浩司は、オナホを手にして薫と向き合った。
「挿れる前は、まず相手の目を見て……『浩司ちゃん、挿れるよ……?』うわ、自分で言っててキモい」
 バカな友達同士のふざけ合いだと割り切ったのか、薫は案外ノリノリだった。膝立ちになった彼は、浩司の持つオナホに位置を合わせ、その先端をゆっくりと挿入した。
「っは、ぁ……」
 快楽をじっくり味わうように、薫が悩まし気に目を伏せる。
「挿れたらすぐに動かないで、相手の様子を見ること。……めんどくさいけど」
「うん、じゃあ今日は気を遣わなくていいってことで、先どうぞ」
 浩司に促され、薫はおもむろに腰を引き、再びグッと奥へ押し込む。膝立ちで腰を振るのが難しかったのか、彼の両手が浩司の肩にかけられた。
 彼の抽挿は次第に早くなっていき、目の前にある彼の唇からはハアハアと吐息が漏れ出す。すぐ下を見れば、狭い筒の中を彼のピンク色の竿がヌプヌプと出入りしていた。
「ん……、ちゃんと動かないようにしっかり持っとけよ」
 たかが無機物相手に、薫は盛った犬のようにカクカクと懸命に腰を振る。これまでも女相手にこんなセックスをしてきたのかと思うと、浩司の中にあるどす黒いものが顔を覗かせた。
「……っ、ちょ、っと……ぁ」
 薫の抽挿などお構いなしに、浩司の方からオナホを動かす。玩具越しにそこを扱くように動かすと、リズムが合わなくなった薫は腰を振るのを止めた。
「く、そ……なんだよ……っ」
「騎乗位の時はこんな感じかなって、童貞の想像です」
 薫の身体を仰向けに押し倒し、手の動きを早める。上下するたびに、そこからはジュポジュポと激しい音が響いた。
「あ、ぁ、っ……ダメ、ぃく……ぁ、あぁあ……っ」
 グチュグチュグチュッと震わせるように激しくラストスパートをかけた後、ジュポンッという盛大な音を立てて彼のそこからオナホを引き剥がす。勢いよく飛び出した彼の屹立は、ヒクンヒクンと震えてはいるものの、吐精の直前で寸止めされた。
「ぅ……あとちょっとだったのに、さい、あく……」
「ごめん、童貞だからタイミングよく分かんなくて」
「嘘つけ……、オナニーならお前だってベテランのくせに……」
 彼はそう言いながら、限界直前で放置された自分自身に手を伸ばそうとする。しかし浩司はすかさず彼の手首を掴んで止めた。
「次、扱き合いで二万円」
「はあ? もういいだろ……って、おい」
 問答無用で彼の手を浩司の股間に持っていく。
「借金。バイク」
 浩司は自らバスローブの前を開けて彼の隣に横たわると、下着越しに彼の手を自身の膨らみに押し付けた。
「っ、何で触ってないのにもう勃ってんだよ……」
「薫を見てたら……童貞喪失の夢がムクムク膨らんで」
「膨らんだのはテメーの股間だ、ドーテー」
 文句を言いながらも、薫は下着越しにサワサワと浩司の肉塊を撫でる。彼は少し躊躇ってから、下着のウエストに手をかけた。少し腰を浮かせてやると、下着のゴム部分から浩司のモノがぶるんっと顔を出す。
「……でかくない?」
「うん、昔比べっこした時より大きくなったかも」
「ま、まあ、使わないならデカくてもズル剥けでも意味ないしな」
「薫のは仮性でかわいいよな」
「黙れ」
 彼はそう言い放った勢いで浩司のモノをギュッと握り、ゴシゴシと擦り始める。他人の手の感触――それも薫の白い指が絡み付く感覚に、浩司のそこへと血液が集中していく。
「はは、ガッチガチ……っ」
 薫はそこで息を呑む。浩司が彼の放置されていた昂ぶりに触れたからだ。
「扱き合いじゃないと二万円にならないだろ?」
 先ほどのオナホでの刺激で、彼の竿はカウパー塗れになっている。少し擦るだけでクチクチと水音が聞こえた。
「は、っ……ん」
 薫の眉根が切なそうに寄せられ、その口から甘い声が漏れる。ベッドの上で向き合って寝転がっているが、このまま彼の身体を抱き寄せてしまいたい衝動に駆られた。
「そういえば、さ……どっちが先に相手をイかせられるか、競争したことあったよな」
「ん……思い、出すな、っ」
「いつも俺が薫のこと先にイかせてさ、アイス奢ってもらって、そのアイスが当たり棒だった時、おまけのもう一本をどっちが貰うか喧嘩して」
 クチュクチュクチュッと素早く手を動かすと、薫の身体が敏感に痙攣した。
「今日も俺の勝ち、かな」
「だって、俺さっきオナホ使われてんだもん、当たり前……っ」
 彼の根元をきつく押さえると、彼は一瞬息を止めた。
「じゃあしばらくこうしてるから、ロスタイムってことで」
「なんだよ、それっ……、絶対先にイかせてやる、くそ、くそぉ……っ」
 絡み付く彼の指の力が強くなる。大きな竿全体を扱くのをやめ、彼は浩司のカリ首や亀頭を重点的に責め始めた。掌の中心に先端が当たるように包み込まれ、亀頭をこねくり回される。
「っ、薫、あんま強くされると痛いってば」
「でも先っぽ気持ちいいだろ?」
「ああ、仮性包茎だと亀頭が敏感らしいね」
「うるさい」
 コネコネと刺激され続けると、次第にカウパーが漏れ始める。それに気を良くしたのか、薫は得意気に笑った。
「今日こそは俺の勝ち……俺が勝ったら……」
「アイス奢り?」
「そんな安いもんじゃなくてさ、もっと高いものにしよう。たとえばコージへの借金三万円をチャラにしてもらうとかさ」
「え……じゃあこのオナニーと扱き合いで貰える三万は?」
「俺のバイク代……っ、ぁ」
 彼の根元を止めていた指を離し、裏筋を撫でる。
「ロスタイム終わり。あと言い忘れてたんだけど、最近俺困ってることがあるんだよな」
「ふぁ……な、に?」
 薫は完全に浩司を弄る手を止めて、快感に震えている。
「童貞でオナニーしすぎたせいか、最近遅漏気味で。巨根とかズル剥けってのも関係してるらしくてさ」
 指で輪を作り、彼の竿を手早く擦りながら、もう片方の手で彼の先端に触れた。
「……ぁ、だめ……先っぽ」
「うん、先っぽ気持ちいいって薫がさっき言ってたから」
 一旦指に唾を付け、それで彼の先端の鈴口をヌリヌリと捏ねる。
「うぁ、そんな、ズルイ、両手なんて……っ」
 擦るたびに、カウパーに濡れた彼の竿がクチックチッといやらしい音を立てる。
「だめ、イく、あ、ぁあ……っ、イ、く」
 先端から勢い良く白濁を散らしながら、彼の性器はビクンビクンと震えた。
「はー、は、ぁ……っ」
「俺の勝ち……ってことは、何か高いものくれるんだっけ?」
 呼吸を整えていた薫がキッと浩司を睨む。
「そ、そんなのナシナシ。一億円くださいとか途方も無いこと言われても無理だし」
「でも、さっきの薫の条件的に、三万円ならアリなんだよな?」
「え?」
「オナニーと扱き合いの賞金で借金三万円返してもらって、さらに利子として三万くれない?」
「……分かったよ。バイク買った後でなら」
「三万円なんて今夜すぐ手に入るじゃん」
 首を傾げる薫に向かって、浩司はベッドサイドに伏せられていたパネルを見せた。
「フェラ、三万円」
「や、やだよ!」
「……勝ったら三万円相当って言い出したのは薫なのに」
「嫌なもんは嫌だ! 無茶振りやめろよ! ほら、もう寝るぞ」
 逃げられる。駄目だ。せっかく掴み取ったこのチャンスを逃すな。捕まえろ。
 ティッシュを求めて身を起こした薫を無理矢理引っ張ると、浩司はそそり立った自身のモノへと彼の顔を押し付けた。
「ちょ、やだって……っ」
「さ、先っぽ、先っぽ舐めるだけできっとカウントされるから」
 硬いモノが彼の頬をなぞり、その先にあるピンク色の唇に亀頭が押し付けられる。
「ほら、もう俺のチンコとキスしてんじゃん。ここまできたら舐めるのも変わんないって」
 口を閉じたまま、薫がイヤイヤと首を振る。
「ペロってするだけで三万円だよ? ほんの一瞬じゃん」
 ハアハアと息を荒げながら、躊躇う薫を見下ろす。おずおずと開かれた唇から、彼の舌がチロリと覗いた。次の瞬間、鈴口にレロッとした生温かい感触。たまらなくなって、思わず彼の後頭部をグッと引き寄せる。小さな呻き声を零す彼の喉奥に、熱い猛りを押し込んだ。
 そのままガツガツと腰を振り、温かな口腔内を蹂躙する。男のイチモツを咥えさせられ、強気だった彼の瞳には涙が滲んでいた。
「ぁ、やば、すげー、気持ちいい……っ」
 性器への直接的な刺激と彼への嗜虐心により、浩司の中の射精感が高まる。ヌポッヌポッと激しい音を立てて出し入れし、最後に彼の後頭部をガッチリと自身の股間に押し付けた。
 ああ、出してる。薫の口の中に。
 もがく彼の頭を押さえ付け、ビュルビュルと精液を喉奥に送り込む。何かを出した分だけ、征服感がその空白を埋めていった。
 彼の中から果てたモノを引き出すと、彼はケホケホと盛大にむせた。
「ば、ばか……、飲まされた! サイアク!」
 目尻に涙を溜めて、薫は枕を投げつけてきた。
「ごめん、つい……」
「ついって何だよ! 俺の舌がそんなに気持ち良かったのか? そりゃ童貞だから舐めてもらうのも初体験だろーしな」
 プイと顔を背ける仕草まで可愛い。
「うん、ごめん。お詫びに俺もするから」
 そう言うや否や、浩司は一度達したままになっていた彼の股間に顔を埋める。
「は? え、そんなんいいってば」
 問答無用でベロリと裏筋を舐めると、彼のうるさい口は「ひぁっ」と変な喘ぎを漏らした。
 やさしく丁寧にペロリペロリと舌で撫でてやると、彼のそこはまた徐々に硬度を取り戻し始める。
「あー、そこっ、そこぉ……」
 先端への責めに彼が悦んでいる隙に、先ほど彼が放った白濁を指に取る。そしてそれをひっそりと彼の後孔に運んだ。
「ひっ、な、何、して……」
「何って、気持ちいいこと?」
「そんなとこ痛いだけだろ」
 無視して指を一本浅く入れると、彼の身体はズリッと後退りした。
「この奥に気持ちいいとこがあるんだって。童貞オナニーマスターの俺が教えてやるから」
「え、えー……?」
「これを知ったらマジやばいってくらいすごいから。セックスのベテランなら絶対知っとくべき」
 鼻息荒く力説すると、薫は少し迷ってからコクリと頷いた。

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